脂質異常症
脂質異常症(コレステロール・中性脂肪が高いと言われたら)
「悪玉(LDL)コレステロールが高い」「中性脂肪が多いけれど、自覚症状がないから放置していい?」
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が正常な範囲から外れている状態です。高血圧と同様に自覚症状がありませんが、「血管にドロドロの汚れが溜まりやすい状態」であり、放置すると脳梗塞や心筋梗塞のリスクを大きく高めます。
脂質異常症の診断基準
以下の数値に当てはまる場合、まずはご自身の「リスク度」を確認することが大切です。
| 項目 | 基準値 | 診断 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| トリグリセライド |
150mg/dL以上(空腹時採血) |
高トリグリセライド血症 |
なぜ、数値の改善が必要なのか?
血液中に脂質が増えすぎると、血管の壁にこびりつき、血管が厚く・硬くなる「動脈硬化」を引き起こします。 これが進行すると、ある日突然、心臓や脳の血管が詰まってしまう「心筋梗塞」や「脳梗塞」を招く恐れがあります。
当院では、単に数値を下げるだけでなく、「今、あなたの血管がどのくらい傷んでいるか」を評価することを重視しています。
当院の検査:動脈硬化を「見える化」します
数値だけではわからないリスクを、以下の検査で詳しく調べます。
- 頸動脈エコー検査: 脳へつながる血管を直接観察し、血管の厚みや詰まり具合を評価します。
- 血圧脈波検査(ABI): 血管の硬さや詰まり具合を5〜10分で測定します。
- 血液検査: 糖尿病や肝機能、腎機能など、他のリスク要因が隠れていないか確認します。
治療の考え方:あなただけの「目標値」を目指します
脂質異常症の目標値は、年齢、喫煙の有無、他の病気(高血圧・糖尿病など)の有無によって一人ひとり異なります。
生活習慣の改善(基本)
- LDLが高い方:お肉や揚げ物を控え、食物繊維を摂取。
- 中性脂肪が高い方:甘いもの、果物、アルコールを控え、適度な運動を。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは数値が下がらない場合や、すでに動脈硬化が進んでいる場合・心血管リスクが高い場合は、お薬による治療をご提案します。患者さまのリスクに応じた目標値を設定し、最適な薬剤を選択します。
① スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)── LDLを下げる基本薬
脂質異常症治療の中心となるお薬です。肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLを20〜50%程度低下させます。心血管イベント予防効果が確立されています。
② エゼチミブ── 腸からのコレステロール吸収を抑える
スタチンとは異なる仕組みで働くため、スタチンと組み合わせることでさらなるLDL低下が期待できます。スタチンで副作用が出た方にも使いやすい薬です。
③ PCSK9阻害薬(レパーサ・プラルエント)── スタチンで目標値に届かない方の「次の一手」
こんな方にご相談ください
- スタチンを飲んでいるのにLDLがなかなか下がらない
- 心筋梗塞・狭心症を起こしたことがあり、LDL 70mg/dL未満(超高リスクでは55mg/dL未満)を目指している
- 家族性高コレステロール血症(FH)と診断されている
- スタチンの副作用(筋肉痛など)で継続が難しい
PCSK9阻害薬は、LDL受容体を分解するタンパク質「PCSK9」の働きをブロックすることで、スタチンに追加してLDLをさらに50〜60%低下させる注射薬です。2〜4週間に1回の皮下注射で、自己注射も可能なため通院の負担も少なく続けていただけます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤名 | レパーサ(エボロクマブ)/プラルエント(アリロクマブ) |
| 投与方法 | 皮下注射(自己注射可能) |
| 投与間隔 | 2週間に1回、または4週間に1回 |
| LDL低下率 | スタチン併用でさらに約50〜60%の低下 |
| 主な対象 | 心筋梗塞後・家族性高コレステロール血症・スタチン不十分な高リスク患者 |
| 保険適用 | あり(高額療養費制度の利用可) |
※PCSK9阻害薬の詳しい説明・対象・費用については、専用ページ「PCSK9阻害薬」またはお気軽に外来でお尋ねください。
LDLコレステロールの目標値はリスクによって異なります
脂質異常症の治療では、全員が同じ目標値を目指すわけではありません。
| リスク分類 | LDL目標値 | 該当する方の例 |
|---|---|---|
| 超高リスク | 55mg/dL未満 | 急性冠症候群後・心筋梗塞既往・脳梗塞後など |
| 高リスク | 70mg/dL未満 | 安定狭心症・糖尿病+リスク因子・家族性高コレステロール血症など |
| 中リスク | 100mg/dL未満 | 複数の危険因子がある方 |
| 低〜中リスク | 140mg/dL未満 | 危険因子が少ない方 |
※ガイドライン(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)に基づく目安です。当院では個別に評価し目標値を設定します。
「健診でLDLが高いと言われたけれど、症状がないから大丈夫」と放置している方が多くいらっしゃいます。しかし、脂質異常症は自覚症状がないまま動脈硬化を進行させます。スタチンを飲んでいるのに目標値に届かない方も、ぜひ一度ご相談ください。
