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二次性僧帽弁逆流(FMR)の病態生理 ─ VFMRとAFMR、そしてM-TEER登場の臨床的背景【医療従事者向け】

[2026.06.11]

はじめに

二次性(機能性)僧帽弁逆流(functional mitral regurgitation:FMR)は、僧帽弁そのものの器質的異常ではなく、左室または左房のリモデリングの「結果」として生じる弁逆流である。一次性(器質性)MRが弁の修復・置換で根治を目指せるのに対し、FMRは心室・心房側の病態が本態であり、弁への介入だけでは問題が解決しない――この理解が、FMR診療の出発点となる。

FMRは予後不良のマーカーである。虚血性心筋症・非虚血性心筋症のいずれにおいても、FMRの重症度が増すほど生存率は低下し、これは虚血の有無を問わない。MRが軽度であっても予後への影響は認められ、severe FMRでは数年単位で生存率が大きく落ち込む。FMRは「合併症」ではなく「予後規定因子」として捉える必要がある。

FMRの病態 ── VFMRとAFMR

FMRは発生機序により大きく2つに分類される。

VFMR(左室由来のFMR)

左室の拡大・収縮障害により乳頭筋が外側・心尖部側へ変位し、腱索を介して弁尖が心室側へ牽引される(テザリング)。弁尖の接合(coaptation)が心室側へずれ込み、収縮期に弁尖が弁輪平面まで届かなくなることで逆流が生じる。陳旧性心筋梗塞後に11〜59%、拡張型心筋症では50%超に合併するとされる。弁輪拡大も相対的に逆流を助長する。

AFMR(左房由来のFMR)

左室の拡大はなく(あっても軽度)、LVEFは保たれている(>50%)。本態は左房の拡大と僧帽弁輪の拡大であり、心房細動やHFpEFを背景に生じる。孤立性心房細動で6〜7%、HFpEFでは最大53%に認められるという報告がある。近年その臨床的重要性が認識されつつあるサブタイプである。

両者は治療戦略・デバイス適応の判断が異なるため、心エコーで「左室主体か左房主体か」を見極めることが第一歩となる。

外科治療の位置づけ

FMRに対する外科治療のエビデンスは、一次性MRほど確立されていない。中等度の虚血性MRを有する患者でCABG単独とCABG+僧帽弁形成術を比較したランダム化比較試験(CTSN試験)では、僧帽弁形成術の上乗せによる死亡・主要心血管脳血管イベントの有意な改善は示されなかった(死亡 HR 0.90、MACCE HR 0.89)。弁形成を加えることでMRは減るが、それが予後改善に直結するとは限らない――FMRの本態が弁ではなく心室にあることを象徴する結果である。

重症FMRに対する外科手術は、開心術の侵襲・FMR患者の高齢化・併存疾患の多さから、ハイリスク症例では選択しづらい現実もある。「外科手術は困難だが、薬物療法だけでは心不全がコントロールできない」――この層に対する選択肢として登場したのが、経皮的僧帽弁接合不全修復術(M-TEER)である。

M-TEER(MitraClip)とは

M-TEER(mitral transcatheter edge-to-edge repair)は、大腿静脈から心房中隔を穿刺してカテーテルを左房・左室へ進め、僧帽弁の前尖と後尖をクリップで把持・接合することで逆流を減らす治療である。代表的デバイスがMitraClipで、外科のedge-to-edge repair(Alfieri stitch)をカテーテルで再現したものに相当する。

開心・人工心肺・全身麻酔下の胸骨切開を要さず、経食道心エコー(TEE)ガイド下に行われる。外科手術が困難なハイリスク症例にも適用できる点が最大の利点である。一方で、誰に・どのタイミングで行うかはエビデンスとガイドラインに基づく慎重な判断を要する。次回(記事②)では、その根拠となった2つの大規模試験――COAPTとMITRA-FR――を取り上げる。

※本記事は医療従事者向けの情報提供を目的としたものです。

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