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重症喘息の治療(生物学的製剤)

気管支喘息の治療では、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)などを組み合わせた治療が基本です。しかし、これらの治療を十分に行っても症状がコントロールできない喘息を「重症喘息」といい、喘息患者さん全体の約5〜10%が該当します。 近年、重症喘息に対して生物学的製剤(抗体療法)という新しい治療の選択肢が広がっています。炎症を引き起こす特定の物質をピンポイントで抑えることで、喘息の増悪(発作)を減らし、経口ステロイド薬の減量や、日常生活の質の改善が期待できます。
当院では呼吸器専門医が患者さん一人ひとりの喘息のタイプや検査結果に基づいて、最適な生物学的製剤を選択・提案いたします。

生物学的製剤の対象となる方

  • 高用量の吸入ステロイド薬+その他の長期管理薬を使用しても喘息症状がコントロールできない方
  • 年に2回以上、全身ステロイド薬が必要な増悪(発作)を繰り返す方
  • 経口ステロイド薬を長期間服用しており、減量・中止が難しい方

「きちんと治療しているのに発作が繰り返す」「ステロイドの飲み薬がやめられない」という方は、生物学的製剤の適応となる可能性がありますので、お気軽にご相談ください。

当院で使用できる生物学的製剤

当院では、以下の5種類の生物学的製剤に対応しています。それぞれ作用する仕組みが異なるため、血液検査や呼気検査の結果をもとに、患者さんに最も合った薬剤を選択します。

ゾレア(オマリズマブ)── 抗IgE抗体

アレルギー反応の引き金となるIgEに結合し、肥満細胞の活性化を抑えることで、アレルギー性の炎症を抑制します。

項目 内容
ターゲット IgE(アレルギーの元となる抗体)
対象 通年性アレルゲン(ダニ等)にIgE陽性の重症アレルギー性喘息
投与間隔 2週間または4週間に1回(体重・IgE値により決定)
投与方法 皮下注射
自己注射 可能(医師の指導後)

アレルギー体質が強い喘息の方に特に効果が期待できます。喘息に加え、慢性蕁麻疹や花粉症にも適応があります。

ヌーカラ(メポリズマブ)── 抗IL-5抗体

好酸球の増殖・活性化に関わるIL-5に結合し、好酸球性の気道炎症を抑えます。

項目 内容
ターゲット IL-5(好酸球を増やすサイトカイン)
対象 血中好酸球数が高い重症喘息
投与間隔 4週間に1回
投与量 1回100mg
自己注射 可能(医師の指導後)

好酸球数が高い患者さんほど効果が大きい傾向があります。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎にも適応があります。

ファセンラ(ベンラリズマブ)── 抗IL-5受容体α抗体

好酸球の表面にあるIL-5受容体に直接結合し、好酸球をほぼ完全に除去します。投与24時間以内に血中好酸球が速やかに減少するのが特徴です。

項目 内容
ターゲット IL-5受容体α(好酸球表面の受容体)
対象 好酸球性の重症喘息
投与間隔 最初の3回は4週間ごと → 以降は8週間に1回
投与量 1回30mg
自己注射 現時点では不可(院内投与のみ)

維持期の投与間隔が8週間と最も長く、通院回数を減らせるメリットがあります。

デュピクセント(デュピルマブ)── 抗IL-4/IL-13受容体抗体

喘息の根本的な原因の一つである2型炎症を引き起こすIL-4とIL-13の両方をブロックします。

項目 内容
ターゲット IL-4 / IL-13(2型炎症の主要サイトカイン)
対象 対象 2型炎症を伴う重症喘息(血中好酸球高値またはFeNO高値)
投与間隔 初回600mg → 以降2週間に1回300mg
投与量 皮下注射(ペン型)
自己注射 可能(最大3ヶ月分の処方が可能)

喘息に加えてアトピー性皮膚炎や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を合併している方に特に適しています。呼吸機能(FEV1)の経年的な低下を抑制する効果も報告されています。

テゼスパイア(テゼペルマブ)── 抗TSLP抗体

炎症カスケードの最も上流に位置するTSLPをブロックすることで、好酸球性炎症・アレルギー性炎症など複数の経路をまとめて抑制します。

項目 内容
ターゲット TSLP(炎症の最上流の物質)
対象 重症喘息(バイオマーカーの値に関わらず幅広い患者に適応)
投与間隔 4週間に1回
投与量 1回210mg
自己注射 可能(医師の指導後)

他の製剤と異なり、好酸球数やアレルギーの有無に関わらず幅広い重症喘息に効果が期待できる点が最大の特徴です。臨床試験では年間の喘息増悪率が56%低下しました。

5つの生物学的製剤 比較表

  ゾレア ヌーカラ ファセンラ デュピクセント テゼスパイア
ターゲット IgE IL-5 IL-5受容体α IL-4/IL-13 TSLP
投与間隔 2〜4週 4週 8週(維持期) 2週 4週
自己注射 ×
適した患者像 アレルギー型 好酸球高値 好酸球高値 2型炎症・合併症あり 幅広い重症喘息
対象年齢 6歳以上 6歳以上 6歳以上 6歳以上 12歳以上

治療の進め方

  1. 検査
    血液検査(好酸球数・総IgE・特異的IgE)、呼気一酸化窒素(FeNO)測定、呼吸機能検査などを行い、喘息のタイプを詳しく評価します。
  2. 薬剤の選択
    検査結果と合併症の有無を踏まえ、最適な生物学的製剤を提案します。
  3. 初回投与
    院内で投与し、30分〜2時間程度経過を観察します。
  4. 継続治療
    効果と副作用を確認しながら定期的に投与を続けます。自己注射が可能な薬剤は、医師の指導のもとご自宅での投与に移行することもできます。
  5. 効果判定
    投与開始後4〜6ヶ月を目安に効果を判定し、治療方針を見直します。

治療費について

生物学的製剤は薬剤費が高額ですが、高額療養費制度を利用することで自己負担を大きく抑えることができます。

3ヶ月分まとめ処方の場合・69歳以下

年収の目安(69歳以下) 月薬剤費の自己負担(3ヶ月分) 多数回該当(4回目以降)
約1,160万円〜 252,600円+α 140,100円
約770〜1,160万円 167,400円+α 93,000円
約370〜770万円 80,100円+α 44,400円
〜約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税世帯 35,400円 24,600円

※上記は薬剤費(3ヶ月分まとめ処方月)に対する高額療養費制度適用後の自己負担額です。
※別途、毎月の診察費・検査費がかかります。
※健康保険組合によっては独自の付加給付制度があり、さらに軽減される場合があります。
※高額療養費制度は2026年夏以降に見直しが予定されています。最新の情報は厚生労働省のホームページまたは当院窓口でご確認ください。

費用面で不安のある方も、まずはお気軽にご相談ください。制度の活用について丁寧にご案内いたします。

よくある質問

Q: 生物学的製剤は喘息の「発作止め」ですか?

いいえ。生物学的製剤は発作を予防するための薬であり、今起きている発作を速やかに止める薬ではありません。発作時にはこれまで通りの発作治療薬(リリーバー)をお使いください。

Q: 今使っている吸入薬はやめてもいいですか?

自己判断でやめないでください。生物学的製剤は、吸入ステロイド薬などの長期管理薬に「追加」して使う治療です。経口ステロイド薬の減量・中止も必ず主治医の指示に従ってください。

Q: 注射は痛いですか?

細い針を使用するため、強い痛みを感じる方は少ないです。冷蔵保存の薬剤は室温に戻してから投与すると痛みが軽減します。

Q: 自己注射は難しくありませんか?

ペン型の注射器は「あてて、押す」だけの簡単な操作です。院内で十分に練習し、安心してできると確認してから自宅投与に移行しますのでご安心ください。

Q: 効果が出るまでどのくらいかかりますか?

薬剤によって異なりますが、一般的に数週間〜4ヶ月程度で効果を実感される方が多いです。4〜6ヶ月を目安に効果を判定します。

Q: 費用が高額で心配です。

高額療養費制度を利用すれば、自己負担には上限があります。自己注射によるまとめ処方(3ヶ月分)を活用した場合、多数回該当の適用で3ヶ月分の薬剤費が44,400円(年収約370〜770万円の方)で済むケースもあります。別途毎月の診察費・検査費はかかりますが、薬剤費と比べると少額です。具体的な費用は受診時にご説明しますので、お気軽にご相談ください。

Q: どのくらいの期間、治療を続ける必要がありますか?

基本的には長期間の継続が必要です。効果が安定した後も、自己判断で中止すると炎症が再燃し症状が悪化する可能性があります。治療の継続・中止は必ず主治医とご相談ください。

Q: 一度始めたらずっと続けなければいけないのですか?

そんなことはありません。生物学的製剤による治療は、効果や症状の経過をみながら主治医と相談のうえで、中止や変更を検討することができます。ただし、自己判断で急にやめると症状が悪化する可能性がありますので、必ず主治医にご相談ください。また、現在お使いの薬剤で十分な効果が得られない場合は、別の生物学的製剤への切り替えも可能です。

Q: 5種類のうち、どの薬が自分に合うかわかりません。

血液検査(好酸球数・IgE)、FeNO測定、合併症の有無などから、医師が最適な薬剤を判断します。まずは検査を受けていただくことが第一歩です。

Q: 他院で喘息治療中ですが、生物学的製剤の相談だけでも受診できますか?

はい。現在の治療内容がわかるもの(お薬手帳、紹介状など)をお持ちいただければ、生物学的製剤の適応について評価いたします。

Q: 費用が高額で心配です。

高額療養費制度を利用すれば、月の自己負担には上限があります。所得区分によっては月44,400円以下に抑えられるケースも多いです。具体的な費用は受診時にご説明しますので、お気軽にご相談ください。

Q: 妊娠中・授乳中でも使えますか?

薬剤によって対応が異なります。妊娠を希望されている方や妊娠中の方は必ず事前にご相談ください。

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