僧帽弁閉鎖不全症(MR)
「階段を上るだけで息が切れる」「夜、横になると苦しくて目が覚める」「心臓に雑音があると言われた」――そのような症状やきっかけはありませんか?
心臓には血液の逆流を防ぐ「弁(べん)」が4つあります。そのひとつ、僧帽弁がきちんと閉まらなくなることで起こるのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。弁がゆるむと、心臓が縮むたびに血液が逆流し、心臓に余分な負荷がかかり続けます。
軽症のうちは無症状のまま長く経過しますが、知らないうちに心臓へのダメージが積み重なるのがこの病気の怖いところです。早めに状態を把握し、適切に管理することが大切です。
こんな症状はありませんか?
- 以前より息切れしやすくなった(階段・坂道・小走りで)
- 夜中に息苦しくて目が覚める、横になると苦しい
- 動悸や脈の乱れを感じる
- 足がむくむ、疲れやすい
このような方もお気軽にご相談ください
- 健診や他院で「心臓に雑音がある」「僧帽弁に逆流がある」と言われた
- 逆流があると言われたが、症状もないし放置していてよいか迷っている
- 心房細動(不整脈)と診断されており、弁膜症との関係が気になる
- 他院で「経過観察でよい」と言われたが、本当に大丈夫か不安
まず心エコーで「今の状態」を正確に把握します
僧帽弁閉鎖不全症の管理はすべて心エコー検査から始まります。「逆流がある」とわかるだけでなく、逆流の量が多いか少ないか(重症度)、心臓の筋肉がどのくらい負担を受けているか、なぜ弁が閉まらないのか(原因)まで、一度の検査で評価します。
当院の院長はエコー専門医として、こうした精密な評価を受診当日に行い、結果をわかりやすくご説明します。「エコーを受けたが意味がよくわからなかった」という方にも、丁寧にお伝えします。
※ 他院での心エコー結果をお持ちいただいた場合も、内容を確認・解説します。セカンドオピニオンとしてのご相談も歓迎します。
当院での治療── まずは薬で症状と心臓を守ります
僧帽弁閉鎖不全症は、弁そのものを薬で治すことはできません。しかし、適切な薬の組み合わせで症状をコントロールし、心臓へのダメージをできる限り抑えることは十分に可能です。当院では心エコーの結果と症状を組み合わせながら、一人ひとりに合ったお薬の調整を継続的に行います。
息切れ・むくみを和らげる薬(利尿薬)
体に余分な水分がたまると、息切れや足のむくみが悪化します。利尿薬は余分な水分を尿として排出し、心臓の負担を軽くします。飲む量・タイミングは症状や体重の変化に合わせて細かく調整します。
心臓を守る薬(ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・SGLT2阻害薬)
血圧を下げるだけでなく、心臓の筋肉を保護する働きがあります。特に心臓のポンプ機能が低下しつつある方では、こうした薬を適切に組み合わせることで、心不全への進行を遅らせる効果が期待できます。近年はSGLT2阻害薬(もともと糖尿病の薬)が心臓保護の観点からも広く使われるようになっています。
脈の乱れを整える薬(抗不整脈薬・抗凝固薬)
僧帽弁閉鎖不全症では心房細動(脈が不規則になる不整脈)を合併しやすく、心房細動は脳梗塞のリスクを高めます。脈を安定させる薬や血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を使って、脳梗塞を予防します。
| 症状・状態 | 使用するお薬の例 |
|---|---|
| 息切れ・足のむくみ | 利尿薬(フロセミド、トラセミドなど) |
| 心臓への負担を減らしたい | ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・SGLT2阻害薬 |
| 脈の乱れ(心房細動)がある | 抗不整脈薬・抗凝固薬(脳梗塞予防) |
| 血圧が高い | 降圧薬(心臓への過負荷を減らすためにも重要) |
※ 薬の種類や量は、心エコー・採血・症状の経過をみながら定期的に見直します。自己判断で中止・減量しないようにしてください。
また、薬による治療と並行して、以下の生活習慣の管理も大切です。
- 塩分を控える(目安:1日6g未満)── 水分がたまりにくくなり、心臓の負担が減ります
- 体重を毎朝記録する── 2〜3日で1〜2kg以上増えた場合は水分がたまっているサインです
- 過度な運動・強いいきみを避ける
- 風邪・発熱・脱水に注意する── 心不全の悪化の引き金になりやすい
定期的な心エコーで「変化」を見逃しません
症状がなくても、逆流が続いている間は心臓に負担がかかり続けています。「症状が出てから」では手遅れになることもあるため、重症度に応じた定期的な心エコーが欠かせません。
| 重症度 | 心エコーフォローの目安 |
|---|---|
| 軽症 | 1〜3年に1回 |
| 中等症 | 1〜2年に1回 |
| 重症(無症状) | 6〜12ヵ月に1回 |
| 重症(症状あり・心機能変化) | 速やかに治療を検討(手術・マイトラクリップ) |
薬で十分にコントロールできないとき── マイトラクリップという選択肢
薬や生活管理を続けても息切れ・むくみが改善しない場合、または心エコーで心臓のダメージが進んでいると判断された場合は、弁そのものに対する治療を検討する段階になります。
外科手術(開胸による弁の修復・置換)が根本的な治療ですが、「高齢で手術のリスクが高い」「心臓が弱っていて手術に耐えられないかもしれない」という方には、マイトラクリップというカテーテル治療が選択肢になります。
マイトラクリップとは?
足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を入れ、胸を切らずに逆流している弁にクリップをはさんで留置する治療法です。心臓を止める必要がなく、体への負担が外科手術とは大きく異なります。
- 胸を切らない・心臓を止めない
- 入院期間が短い(術後数日程度)
- 高齢の方・心臓が弱っている方・複数の持病がある方でも受けられる可能性がある
- 保険適用あり(適応基準を満たした場合)
マイトラクリップが適応かどうかは、心エコー(特に経食道エコー)で弁の形を詳しく確認したうえで判断します。当院では経胸壁エコーによる評価を行い、適応があると判断した場合は連携する専門施設(循環器センター)へご紹介します。
※ 弁の形によってはクリップが技術的に難しい場合があります。その場合も外科手術を含めた他の選択肢についてご説明します。
まとめ
「雑音や逆流を指摘されたが、どうすればいいかわからない」「息切れが気になるが年のせいかと思っていた」「薬を飲んでいるが症状が改善しない」「手術以外の方法があるか知りたい」――どんなことでも、まずはお気軽にご相談ください。
当院では、心エコーで現在の状態を正確に把握したうえで、薬の調整・生活指導・定期フォローを継続的に行います。薬だけでは対応が難しくなった際には、マイトラクリップを含む治療の選択肢をご説明し、必要に応じて専門施設へつなぎます。「今のところ大丈夫」という状態を長く保つために、ぜひ定期的にご受診ください。
